いつも思うけど、よく鎖に縛られているのに熟睡できるな
分かってるじゃないか。今日は畑で採れた野菜を使ってみた
ただ、本格的に戦争になるかどうかは、魔族の方にかかっているらしい
王国の方はもう満足している。魔王が死んだ気でいるからな
お前、もう鎖で拘束されていることに違和感はないんだな
どうだ。鎖を長くして、その部屋内なら自由に動けるようにはしてやったぞ
眠たければ、俺が寝ていない間ならそこのベッドも使って構わない
探索が終了してしまった。何もないじゃないかこの部屋
お金なら有り余ってる。牛、鶏……まあその辺で良いか
さらに家にいる時間が少なくなるからな。パンとかはお前の手の届く場所に置いておくから、俺が帰ってこなかったら食べてくれ
月明かりが入ってきている。今夜はさぞかし月が綺麗な夜なのだろうな
いや、自分の置かれている立場は、分かっているのだがな
首を鎖で繋いで、俺と散歩するっていうなら構わないが?
私に自由はほとんどない。手に出来る自由は、何としてでも手にしたい
彼女は美しかった。醜い鎖に繋がれていてさえも。
それどころか、鎖は月明かりを反射して、綺麗に輝いていた。
月夜に照らされて、嬉しそうに踊る彼女の姿は、さながら妖精のようだった。
おお、これが牛か。噂通りミノタウロスのような顔をしている
そんなの見た順で変わるものだ。私は牛より先にミノタウロスを知った。よしよし(ナデナデ
ベロリ
やはり私は、お前のことを悪人として見ることはできない
お前は、私に嫌われようとしているだろう。わざとひねくれたことを言って
畑や、牧場を見たら分かる。醜い心では、こうも見事なものはできない
……寝ぼけておかしくなったか? ほら、もう行くぞ(グイ
魔王は基本的に世襲制だ。魔王の子がその力を引き継ぎ、次の魔王となる
お前は、それで良かったのか? 生まれた時から魔王として生きることを決められて
自分はこう生きたかったとか、そういうのは無かったのか?
道が作られているのに、その道を通らない理由があるのか?
誰かに決められた道を歩くのはつまらないと謳う者がよくいる
でも、誰かが作ってくれた道を進むことは、当たり前のことだろう?
誰かが私の為に道を作ってくれたのなら、私はその道を歩きたい
そうだろうな。誰かの好意を無下にして、終わりの見えない道を通って、そこまでして勇者になる道を拒むなんてできない
みんなが馬鹿みたいに俺に期待するから断るに断れなかった
気付いたら体が動いてるとか、そんな勇者的な理由じゃない
でも、俺が強くなるにつれて、そんな感謝もなくなっていった
助けなかったら罵声を浴びる。助けるのが当たり前とでも言いたげに
助けても怯えられるだけ。魔族の共食いを見ているような目をされる
素直な気持ちで良い。理由のない人助けは、自己犠牲になりがちだ
助けられておいて感謝しない人間なんて、放っておけばいい
勇者的じゃなくたっていいじゃないか。お前は勇者である前に、人間なんだから
さっき言った通り、魔王への道が最初からあったのもあるし……なにより、皆を守りたかったから
先代は厳格で、全ての魔族を統治していたし、人間の支配を企んでいた
だが、魔王になることで力を得て、皆を守れるなら、私は魔王になりたいと思ったし、お前を倒そうと思った
……らしくないことを言った。また風邪でも引いたかな
残念なことだ。昨日のことも、全て風邪だったからなのか
もういい喋るな。食事くらいたまには私が作る(トタトタ
何か言ったかー? 勇者、何が食べたい。リンゴでも剥こうか(ガサガサ