勇者「冒険の書が完結しない」

勇者「冒険の書が完結しない」⑦

投稿日:2017-09-03 更新日:

真魔王
……人間共め……もはや微塵も容赦はせぬ……

真魔王
勇者! お前だけは全力で屠ってやろうぞ!!

真魔王
出でよ我が眷属たち! 全霊をもってかかれ!!

真魔王は仲間を呼んだ!
魔物の群れが現れた!
魔物の群れが現れた!
魔物の群れが現れた!
魔物の――
戦士
……う、うそだろ……なんつー数だ……

賢者
勇者さん。どうしますか。勇者さん

勇者
……馬鹿な……冒険の書は正しかったというのか……

僧侶
……。…………皆さん

僧侶
皆さん! 少しの間だけでいいです! 時間を作ってください!

僧侶
私が後ろの扉の結界を破ります!

戦士

賢者
確かに、一か八かの逃げに賭けるしか!

勇者
分かった! 僧侶、頼んだぞ! 残った三人は応戦だ!

真魔王
おおお……力が……力が溢れてくる……来るがよい!!

戦士
言われなくてもそのつもりなんだよ!

戦士の攻撃!
真魔王は剣を受けとめ、その刃を折った!
戦士
なーっ!?

真魔王
くだらぬ……

真魔王はかがやく息を吐いた!
真魔王の攻撃! 真魔王の攻撃! 真魔王の攻撃!
戦士
げふっ……バカ……強すぎんだろ……

戦士は死んでしまった!
勇者
戦士! くそおおっ!!

魔物の攻撃! 魔物の攻撃! 魔物の攻撃!
賢者
くっ。とてももちません

勇者
く、くそっ! 僧侶! まだか!?

僧侶
まだです……いま……私の持ちうる全ての魔力を注いでいます……

勇者
必ず開けてくれ! 賢者、僧侶の援護はできないのか!

賢者
負の魔力に満ちた扉です。聖なる力に長けた僧侶さんの方が適しています

賢者
そう。僧侶さんの方が――つっ

勇者
賢者! 待ってろ、いまベホマを

賢者
いりません。勇者さん。伏せてください

賢者はメガンテを唱えた!
自己犠牲の爆発が 魔物の群れを一掃した!
賢者は死んでしまった!
真魔王
小癪な真似を!!

勇者
賢者! 賢者! く、くそ、もう世界樹の葉がない!

僧侶
勇者さん……け……結界が解けました……

勇者
!!

勇者
よくやった僧侶! ここは一旦引くぞ!

僧侶
私はいいです……もう、疲れました。……勇者様だけでも……勇者様……

勇者
ふざけるな! 背負ってでも連れていくからな!

真魔王
勇者よ。どこへ行く

真魔王
この魔王の間を、この魔王城を、この世界から逃げられると思ってか?

勇者
くっ……

真魔王
絶望せよ。お前の長い旅もここで終わりだ。我が魔力によって滅びるがよい

勇者
う……くそ……

勇者
今思えば冒険の書のお陰で、魔王はオレ達が打倒し得る強さに抑えられていたんだ……

勇者
……やはり冒険の書を消し去ったのは間違いだったのか……?

勇者
オレは延々とループに飲み込まれていた方が正しかったのか……?

勇者
平和な日々を得たいなんて……高望みだったのか……?

真魔王
終わりだ。永遠の眠りにつくがよい

勇者
あ……――」

おっ開くぞ! 急げ!!

魔王の間の扉が開かれた!
勇者
!?

兵団
「うおおおおおおおっ!!」

兵士の集団がなだれこんできた!
兵士の集団がなだれこんできた!
兵士の集団がなだれこんできた!
兵士
魔王だ! 勇者殿もいるぞ!

兵士
魔王を倒せ! 勇者殿をお助けしろ!!

隊長
勇者殿! ご無事ですか!?

勇者
こ、この軍勢は……

隊長
我々は王に派遣された者です!

隊長
我々のみならず世界各地の兵団が、続々と勇者殿の応援へと駆けつけております!

勇者
な……なぜ……

兵士
魔王は、地上に住まう全ての人々の仇敵です!

隊長
『勇者が魔王を討ち果たす』という伝承など、誰のどんな権限で決め付けられたのでしょうか!

兵士
勇者殿に丸投げするわけにはいきません! 我々も戦います!!

戦士
勇者!

賢者
勇者さん!

僧侶
勇者様っ!

勇者
みんな! 生き返ったのか!

隊長
蘇生や魔力回復などの貴重な道具を、数多く持ち寄りました! 優秀な人材も集結しております!

隊長
さあ勇者殿! まだ力を振り絞れるなら、我々と共に――

兵士
ぐあああああああっ!

隊長
!?

真魔王
何ゆえ……何ゆえにお前達は、己が使命を見出せるのだ……かくも克明に……

勇者
魔王っ……!

真魔王
余は数多の眷属を従える魔王……万物の魔を統べる唯一……

真魔王は仲間を呼んだ!
魔物の群れが現れた!
魔物の群れが現れた!
魔物の群れが現れた!
隊長
増援だ! 迎えうてーっ!

\オオオオオオオーッ/
勇者
オレ達は本命を叩くぞ! 仲間を見失うなよ!

戦士
おおっ!

僧侶
はいっ!

賢者
まずは陣形を固めましょう。いったん補助呪文をかけ直します

勇者
まさかこんな流れになるとは思わなかったが……これで負ける気がしない!

真魔王
余は倒れる訳にはいかぬ……余という存在ある限り……

真魔王はベホマを唱えた! 真魔王の傷が回復した!
真魔王は仲間を呼んだ! 魔物の群れが現れた!
真魔王は仲間を呼んだ! 魔物の群れが現れた!
勇者
それがどうした! みんなこれが最後だ、全力で行くぞっ!

真魔王は仲間を呼んだ!
魔物の群れが現れた!
  魔物の攻撃!
  兵士の攻撃!
  兵士の攻撃!
勇者の攻撃!
戦士の攻撃!
真魔王の指先から凍てつく波動がほとばしった!
賢者はバイキルトを唱えた!
僧侶はフバーハを唱えた!
  兵士は倒れた!
  魔物を倒した!
  兵士の攻撃!
真魔王はかがやく息を吐いた!
真魔王の攻撃!
真魔王はイオナズンを唱えた!
勇者はベホマズンを唱えた!
  兵士の攻撃!
  魔物の攻撃!
  魔物を倒した!
賢者は祈りの指輪を使った!
僧侶はスクルトを唱えた!
  魔物の攻撃!
  兵士の攻撃!
真魔王はかがやく息を吐いた!
真魔王はかがやく息を吐いた!
戦士の攻撃! 会心の一撃!
賢者はベホマラーを唱えた!
勇者の攻撃! 会心の一撃! 
――
真魔王
余は……解せぬ。何もかも……

戦士の攻撃!
戦士の攻撃!
真魔王
余は……何ゆえここに在るのか……

賢者は○○を唱えた!
賢者は○○を唱えた!
真魔王
我が魂は……永遠に……不滅……なのか……?

僧侶は○○を唱えた!
僧侶は○○を唱えた!
勇者
うおおおっ!!

勇者の攻撃!
会心の一撃!!
真魔王
ぐ……愚問か……ふっ……不思議なものだ……何も……

真魔王
何も感じぬ……感じられぬ…………

真魔王を倒した!!
兵士
む……急に魔物どもの動きが鈍くなったぞ

兵士
見ろ! 魔王が! 勇者殿が魔王を討ちとったんだ!!

兵士
勝った! 我々は勝ったんだ!!

\オオオオオオオーッ/
僧侶
……今度こそ、終わったのですね。私たち……今度こそ本当にやりとげたんですね!

戦士
っしゃあああ! これで本当に世界が救われたぜ!!

賢者
生涯使うつもりはなかった自己犠牲呪文を私に使わせるほどの難敵でした

僧侶
勇者様! 勇者様! ああ……本当によかった……

戦士
っしゃあああ勇者最高! ってどうした勇者! もっと喜べよ!!

勇者
……賢者

賢者
はい

勇者
魔王は……『冒険の書の亡霊』なんかじゃなかったさ

勇者
魔王もまた『犠牲者』だったんだ。あんな目には遭ったけど、全てが終わった今となっては……

勇者
世界中の誰もが喜んでも……オレだけはヤツに同情するよ

――
【王の間】
勇者よ! よくぞ魔王を倒した!

心から……心から礼を言うぞ! そなたこそ真の勇者じゃ!!

そなたのことは、人々の間で永遠に語り継がれてゆくであろう!!

さて、今宵は盛大な祝賀を開こうぞ! 勇者への褒美もすでに考えておる!

勇者
恐れながら王様

ぬ?

勇者
この度の褒賞は、わたしの仲間と、魔王城へ攻め入ったすべての兵士に分け与えください

勇者
わたしめには僭越ながら、たった一つの望みさえ叶えて下されば結構です

な、なんと。申してみよ

勇者
はい。一日も早く国を発展させ

勇者
新たな発見を重ね、学術を深め――世の文明を次なる域へと進めてください

勇者
それが今におけるわたしの、生涯の望みへと繋がります。どうかなにとぞ、お願いします

なんと無欲な! そなたの望み、しかと聞き入れたぞ! 何か困ったことがあればいつでも申すがよい!

――
勇者
そうだ。魔王を倒したことで、また新たな目的ができた

勇者
『冒険の書』

勇者
結局不透明のままだ。このままオレの中だけの過去に埋もれるのは気に入らない

勇者
人に役割を与える? いたずらに時間をループさせる?

勇者
魔王討伐後に共に過ごした、別の未来の仲間たちはどうなった? 魔王の無念は蚊帳の外か?

勇者
神のつもりか。もしくは神そのものなのか。どちらが相手でも、このまま収まらせる訳にはいかない

勇者
必ず

勇者
その正体を暴いてやる

勇者
たとえ途方もない年月をかけても――

戦士
あーっ、見つけた! 勇者ーっ!

僧侶
勇者様!

賢者
勇者さん

勇者
みんなっ? もう祝賀会は始まってるはず……

僧侶
私決めました! 一生勇者様についていきます!

勇者
ええっ

賢者
まだやることが残っているのでしょう。決して邪魔はいたしません、どうか私もお供を

勇者
ええっ

戦士
悪いが俺は、これからお袋を助けにゃならんからついていけねえぜ!

勇者
ええっ……あ、それでいい。それがいい

戦士
だが、困ったときはいつでも頼ってくれ! 俺たちは生涯の仲間だぜ!

勇者
ええっ

戦士
なんでだよ!

僧侶
勇者様、会場に戻りましょうっ。みんな待っていますよっ

賢者
私も賛成です。例えば、何かを大衆に伝えるとするなら、今が好機ではないですか?

勇者
……そうだなぁ

勇者
とりあえずしばらくは、念願の平和な世界に落ち着くとしようか

TRUE END
きらら(管理人)
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