勇者「魔王死ななきゃ俺不死身じゃね?」

勇者「魔王死ななきゃ俺不死身じゃね?」⑨

投稿日:2017-09-09 更新日:

龍人
怖い顔っ……!?

ぷっ

龍人
わ、笑うなぁぁ!

フレデリカ
鬼といっしょにいるときは楽しそうなのになー

フレデリカ
ねぇ、鬼ー

んー? なんですかフレデリカ様

フレデリカ
のどがかわいたから、ちょっとだけその水を飲ませてほしいの

うぇあっ? だ、駄目ですよ。子供にはまだ早いです

フレデリカ
えーっ? いじわる!

う、うーん……まあ、ちょっとくらいなら

勇者
駄目だからな?

はいですよねすいません


九尾の狐
……む? 何か、体が重いような……

フレデリカ
……(スー

九尾の狐
またか。私の尻尾の中で眠るのはやめていただきたいのう。まあまだ子供じゃし、少しはよいとも思うが……

魔王
……(スー

九尾の狐
まおうさまー?

勇者
……九尾。尻尾から足とか手とかいろいろ出てて不気味なんだが

九尾の狐
魔王様とフレデリカ様じゃぞ?

勇者
フレデリカはいいとして、何やってんだ魔王……

吸血鬼
親子丼っ……!(ハッ

勇者
お前はもうなんかどうしようもないな本当に

吸血鬼
いやいや。ほら、急に親子丼食べたくなったなーって。九尾ちゃん作って♪

九尾の狐
材料は自分で調達するのじゃな

吸血鬼
えー


吸血鬼
ねぇ、龍人?

龍人
なんだ

吸血鬼
あなたってば意外とハーレムよね

龍人
ふん、くだらんことを言うな。将軍に男も女もない!

吸血鬼
顔真っ赤にして言われてもねぇ


魔族医
あー、その資料はそこに置いといてくれ

吸血鬼
はーい。よい、しょっと(ドサッ

魔族医
悪いな。毎晩毎晩

吸血鬼
いいのいいの。私、死霊将軍だし

魔族医
……もしかして、それだけのために?

吸血鬼
いや、言ってみたかっただけ

魔族医
でも本当、何で毎晩手伝ってくれるんだ?

吸血鬼
いつの日か、あなたの夜のお相手をしたくて……♪

魔族医
はいはいそういうのはもういいから

吸血鬼
つまんないなぁ

吸血鬼
……でも

吸血鬼
わりと、本気だったりして

魔族医
……そういう不意打ち、やめてくれないかな

フレデリカ
何してるの?

吸血鬼
あっ、フレデリカさまー。この紙をですねー、きちんとかたづけなきゃいけないんですよ

吸血鬼
さあ、そろそろお休みの時間ですよ? それと、きちんと自分のお部屋は片付けるんですよー?

フレデリカ
うん、わかった!

吸血鬼
よしよし、偉いですねー♪(ナデナデ

魔族医
可愛がるのはいいが、資料をそこらへんに置くのはやめてくれ……


魔王
そろそろ、かな

勇者
本当にいいのか?

魔王
ああ。……元々、私はお前のものだからな

魔王
なあ、一つ頼みごとがあるんだが

勇者
ん?

魔王
私のベッドを、あの子に渡してあげたい。いいか?

勇者
……さすがに、もう一度持っていったりしないよ。新しいベッド、実はもう買ってあるんだ

魔王
ありがとう

魔王
フレデリカ。急だけど、私と父様はしばらくここを離れる

フレデリカ
そうなのですか……?

魔王
何かあったら、九尾を頼るんだよ

魔王
そうだ。ちょっと私の部屋に来なさい

フレデリカ
? はい、お母さま

フレデリカ
本当に私に、このベッドをくれるんですかっ?

魔王
ああ。このベッドは、私のお母様も使ってたんだよ

フレデリカ
そんなベッドを、私が……?

魔王
心配するな。お前は私の子だ。自信を持て。これからは、お前が魔王なのだから

フレデリカ
……お母さま? どこかへ、行ってしまうのですか?

魔王
……(クス

魔王
私には、新しいベッドがあるから。別に形見という訳じゃないさ

魔王
大丈夫だよ。私は、いつでもお前の傍に居る

魔王
もう、行かなければ。元気にしているんだよ

魔王
お前が大人になる頃には、帰ってくるから

勇者
これで本当に良かったのかな

魔王
いいんだ。どんなに別れを大袈裟にしたって、寂しいだけだからな

勇者
そうじゃなくて。……お前が嫌なら、ずっと魔王城で暮らしたっていいんだぞ?

魔王
フレデリカは、もう大丈夫だ。私を育てたのだって九尾だ、あいつになら任せられる

魔王
彼女が無事なら、名残は無いよ

九尾の狐
そうか。もう行ってしまわれるのか

魔王
九尾。魔王城は頼んだよ

九尾の狐
任せるのじゃ

九尾の狐
……これも、仕方のないことよな

九尾の狐
魔族と人間では、寿命が違いすぎるのだから

―山小屋―
魔王
うーん、帰ってきたな

勇者
うん。畑も牧場も、何の問題も無いな

魔王
何年も空けていたのに……?

勇者
ああ。魔力で何とか

魔王
お前の魔法は本当に何でもありだな

魔王
さて。鎖をつけるか

勇者
別につけなくてもいいだろ

魔王
えっ?

勇者
お前、まだここから逃げる気があるのか……?

魔王
うーん。家出するかもしれないぞ

勇者
可愛いから許す

魔王
えー

勇者
鎖をつけたいのか? どういう考えなんだ?

勇者
……もう、『鎖が無くても繋がっていられる』って言ったじゃないか。少し寂しいな

魔王
なんというか……とにかく、その方が落ち着くんだよ。ここではな

魔王
頼む、つけさせてくれ

勇者
頼むことか、それ……?

魔王
うん、うん(ジャラッ

勇者
……満足気だな

魔王
しっくりくる

勇者
夕食ができたぞ

魔王
久しぶりだな、勇者の料理は

勇者
(スッ

魔王
何だその手

勇者
口、開けて

魔王
お前、……懐かしいなぁ、まったく

魔王
こうやって食べるの、久しぶりだな。何だか照れる

魔王
……っ(ハムッ

勇者
可愛い可愛い(ハハ

魔王
うるさいっ

勇者
さ、寝よう寝よう(バフッ

魔王
寝よう寝よう(バフッ

勇者
当然のように俺の上にのしかかってきた、こいつ

魔王
幸せだろう(ニヤニヤ

勇者
まあな

魔王
……即答するなよ

魔王
…………

勇者
おい

勇者
そろそろ息が苦しいんだけど

魔王
幸せなんだろう?

勇者
悪かったよ……分かったから横にずれてくれ

魔王
♪(ダキッ

勇者
結局苦しいし……。力が強いって、お前

魔王
いいじゃないか。魔王城に行ってからは全て我慢してきたんだから

勇者
まあ、なぁ……

魔王
なあ、勇者

勇者
なんだ、魔王

魔王
ふふっ、このやり取りも久々だ

勇者
はは、そうだな。で、なんだ?

魔王
好きだ、勇者

勇者
……(フイ

魔王
ちょ、ちょっと。何でそっぽを向く

勇者
顔がにやついて戻らない(プルプル

魔王
こら、ちゃんと返事をしろ、おーい、勇者

勇者
あー、分かった分かった! ……好きだよ、魔王

魔王


魔王
おはよう、勇者

勇者
おお? 早いな、魔王

魔王
ふふん、魔王城では忙しかったからな。時間には几帳面になった

勇者
その割には、昨日も良い雰囲気の中さっさと寝てたけどな

魔王
うぅ……

魔王
……太ってる

勇者
なんだいきなり

魔王
確実に、前より太ってる。魔王城の食事が美味しかったからだ

勇者
俺は気にしないよ

魔王
……バカ

勇者
なあ、魔王

魔王
なんだ、勇者?

勇者
俺達って、勇者と、魔王だよな

魔王
何をいまさら

勇者
なんだかさ、仲良くして、子供までつくって、その上また二人で人知れず暮らしてるって

勇者
もはや、勇者と魔王なんかじゃないよな

魔王
ならばいっそ称号を変えてみたらどうだ? 隠居している身だから、『女隠居』『男隠居』とか

勇者
……言いにくいから、勇者と魔王でいい

勇者
……あと何年生きられるかな

魔王
寂しいことを言わないでくれ

勇者
魔王は、きっと俺より長生きするだろう?

勇者
そう考えると、人間の寿命ってすごく短いんだなって

魔王
その分、人間の一生は凝縮されている。いつまでも命があるものと思うから、魔族は、だらだらとした空っぽの一生を送る者が多い

勇者
はは。それなら、俺の人生は空っぽな上に短いわけだな

魔王
いや違うよ。気持ちの在り方さ

魔王
寿命が短いと分かってから、お前にはきっと一日一日が違うものに見えてきただろう?

勇者
……まあ、そうだな

魔王
命の短いものほど、濃縮した生を送る。寿命の長さはあまり関係ないのかもしれないな

魔王
蜉蝣という昆虫を知ってるか?

勇者
詳しくは知らないが、一応

魔王
蜉蝣は、成虫になってから一日と生きられない

勇者
へぇ……それで、よく今まで生き残ってきたな

魔王
成虫になって、繁殖をして、その一生を終えるんだ

魔王
成虫になった彼らは、一体何を想うのか

魔王
何にせよ、彼らの一生は、きっと誰よりも輝いているのだろうな


フレデリカ
ねぇ、九尾?

九尾の狐
なんじゃ、“魔王様”

フレデリカ
私、いつになったら大人になれるのかしら

九尾の狐
ほう。また、面白いことを訊きますのう

フレデリカ
お母様が言ったの、私が大人になる頃には、戻ってくるって

九尾の狐
……。それなら、もう少しで戻ってきましょうな

九尾の狐
もう貴方は、立派な大人になられた


勇者
なあ、魔王

魔王
なんだ、勇者?

勇者
魔王は、綺麗だな

魔王
なんだいきなりっ

勇者
いつまでたっても、可愛いし、美人だし、愛しい

魔王
…………勇者?

勇者
俺は、徐々に老けていく

勇者
自分の体が、急速に衰えていくのを感じる

勇者
なあ魔王、こんな俺でも、愛してくれるのか?

魔王
当然じゃないか。今更、お前を嫌いになるものか!

勇者
俺は、自分が愛せないよ。お前が若い姿のままだからかもしれないけど、老いていく自分に言いようもない嫌悪感を催す

勇者
自分の体が、汚れたものに見えて仕方がない

魔王
そんなことない……!

勇者
お前が、俺を嫌いじゃないというのが、信じられないくらいなんだ……

魔王
……んっ(ズイ

勇者
な、なんだ?

魔王
言葉で信じられないなら、体で信じればいい

勇者
……そんなものか?

魔王
そんなものだ。ほら、目を閉じていろ

魔王
…………(チュ

魔王
これでどうだ? 少しは暗い気持ちが晴れたか

勇者
……申し訳なさでいっぱいだ

魔王
何を言っているっ。初めてのキスだって、お前としたのだぞ。何をいまさら、申し訳なくなる理由があると言うんだ

勇者
お前は綺麗だ。そんなお前を、汚してしまった気がしてならない

魔王
……勇者。そんな卑屈にならないでくれ。私まで悲しくなってしまう

勇者
…………ごめんな

魔王
足りないというなら、勇者。……ひさびさに、寝ないか?

勇者
……お前を汚したくない

魔王
勇者ぁ……。どうしてそう、お前は。これでも、言うの恥ずかしかったんだぞ

魔王
なにか? 私となんか、寝るに値しないと言いたいのか?

勇者
いや、そういうわけでは

魔王
ならいいだろう。ほらっ、早く横になれ!


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